
「残業代の計算、これで合っているのかな…」と不安になったことはありませんか? 月給制の社員の時給の出し方、割増率、固定残業代の扱い。感覚で計算していると、気づかないうちに未払い残業代のトラブルにつながるおそれもあります。この記事では、中小企業診断士の春原が、残業代の計算方法を5ステップで解説します。練習問題つきなので、読み終えるころには自社で計算できるようになります!
この記事でわかること
- 残業代の基本の計算式と、割増率が変わるケース
- 月給制の社員の時給を、月平均所定労働時間から正しく求める方法
- 残業代を5ステップで計算するやり方と、1円未満の端数の処理ルール
- 固定残業代(みなし残業代)の計算方法と、超過分の扱い
- 練習問題で確認できる、自社でそのまま使える計算の流れ
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みなさんこんにちは!中小企業診断士の春原です!
今回は、残業代の計算方法を世界一わかりやすく解説します!
中小企業の経営者からの依頼で意外と多いのが「給与計算」。
特に、残業代の計算方法がわからないとうお悩みをよく聞きます。
わからないゆえに、中にはテキトウに計算してしまったり・・・。
今回は、そんな中小企業経営者の皆さんに、世界一わかりやすい残業代の計算方法をお教えします!
残業代の計算式は、たったこれだけ!
まずは、残業代の全体像から確認していきたいと思います。とはいっても、残業代の計算は実はとてもシンプルです。
基本の計算式:時給×1.25×残業時間
残業代とは、「時間外労働時間」に対して、支給される給与のことです。
1日8時間超え、もしくは1週間で40時間超えの労働時間が「時間外労働時間」、つまり残業時間となります。
時間外労働をした場合、通常の労働時間の時給分を1.25倍した金額を支給します。
そのため、残業代の計算式は以下になります。
残業代=時給×1.25×残業時間
ちなみに、1.25倍はあくまでも最低ラインです。最低でも1.25倍にしてくださいという規定であり、それ以上に設定することは問題ありません。ほとんどないとは思いますが、頭の片隅に置いておいておくと良いでしょう。
時給1,000円、1日10時間労働した場合の計算例
それでは、時給1,000円の人が1日10時間の労働をした場合の計算式を見ていきましょう。
法的に労働時間8時間を超えた分が残業時間ですので、時間外労働時間(残業時間)は2時間です。
つまり、
1,000円(時給)×1.25×2時間(時間外労働時間)=2,500円
残業代は2,500円になります。
注意:1.25倍にならない場合がある
実は、時間外労働でも1.25倍にならないものがあります。それが、
- 月間で60時間を超える時間外労働
- 休日労働
の2つです。
60時間越えの残業は、1.25倍ではなく、1.5倍以上にしなければいけません。そのため、もし残業時間が65時間だった場合、60時間までは1.25倍の残業代、60時間~65時間の5時間は1.5倍の残業代となります。
休日労働の場合、残業代は不要です。ただし、そもそも休日労働自体が1.35倍の割増にされていることに気を付けましょう。
月給制の正社員は、時給をどうやって求める?
残業代を計算するためには時給が必要です。
ただ、アルバイトやパートであれば時給が決まっていますが、正社員は一般的に月給です。
そのため、月給から時給を計算する方法が今回のポイントになります。
毎月の時給が変わる!?~月給を月の労働日数で割る弊害~
当然ですが、1か月あたりの労働日数は異なります。
1月の日数は31日ですし、2月の日数は28日。そのため、労働日数も異なります。
でも、月給は1月でも2月でも同じわけですから、そのまま計算すると時給が変わってしまします。
例えば、月給30万円の人が1月に22日働いたとしましょう。
そうすると時給は
300,000円÷(22日×8時間)=1,704.5円
一方、2月は1月より3日少ないので、19日間の労働になります。
すると、
300,000円÷(19日×8時間)=1,973.6円
この例のように、月によって時給が変わってしまうのです。

「月平均所定労働時間」を計算する
では、どのようにして正社員の時給を算出するのでしょうか?
実は、月給から時給を算出する方法はルールで決まっています。
それは、月平均所定労働時間から、時給を計算する方法です。
月平均所定労働時間とは、「1カ月間の労働時間の平均」のことであり、就業規則や雇用条件通知書、求人票などにも記載されています。
1カ月単位では月ごとの日数が変化するため、時給も月によって変わってしまいますが、
1年間の労働日数を12か月で割った1か月の平均日数であればバラつきません。
これが、月平均所定労働日数です。
この日数に労働時間をかけると、月平均所定労働時間を求めることができます。

「所定」とは、会社で決めた、という意味です。つまり、「所定労働日数」であれば、会社で決めた労働日数のこと。「1か月の所定平均労働時間」であれば、会社で決めた1か月あたりの平均の労働時間を指します。逆に、「法定」というのは「法律で決まっている」、という意味です。「1日8時間労働」というのは、法定労働時間の上限で、企業によっては1日7時間勤務の場合があるので、その場合は所定労働時間は7時間という意味になります。
月平均所定労働時間を求めよう!
それでは、月平均所定労働時間を求めるための計算をステップバイステップで解説していきます。
残業代を求めるステップ
- 1年間の所定労働日数を求める
- 月平均所定労働日数を求める
- 月平均所定労働時間を求める
- 時給を算出する
- 1時間あたりの残業代を計算する
①1年間の所定労働日数の求め方
まずは、1年間の所定労働日数を求めます。
1年間の所定労働日数は、1年間の所定休日から逆算します。
つまり、1年間の所定休日が125日であれば、
365日-125日=240日
が1年間の所定労働日数です。
以降、所定労働日数240日(所定休日125日)として、解説します。
所定休日については、労働契約書や雇用条件通知書、就業規則に記載されているので、それを確認しましょう。
ちなみに、所定休日には有給休暇は含まないので、注意してください。
②月平均所定労働日数の求め方
1年間の所定休日が求まったら、次は月平均の労働日数を求めます。
これは簡単で、1年間の所定労働日数を12か月で割るだけです。
240日(1年間の所定労働日数)÷12か月=20日
つまり、1年を通して、1カ月の平均の労働日数は20日ですよ、ということですね。
③月平均所定労働時間の求め方
次は、1カ月あたりの労働時間を求めます。
基本的に1日8時間働きますので、
20日(月平均所定労働日数)×8時間=160時間
つまり、1カ月で平均160時間働く、ということです。
④時給を算出する
ここまできたら、あと少しです。
対象となる従業員の月給が30万円だったとします。
つまり、1カ月で160時間、月給30万円で働いているわけですから、時給は
300,000円(月給)÷160時間(月平均所定労働時間)=1,875円
つまり、時給は1,875円です。
⑤1時間あたりの残業代(残業単価)を計算する
では、最後に1時間あたりの残業代(残業単価)を計算しましょう。
残業単価は、時給の1.25倍になります。つまり、
1,875円(時給)×1.25=2,343.75円
端数を繰り上げますので(次で説明)、1時間あたりの残業代は、
2,344円
になります。
そのため、もし残業時間が10時間であれば、
2,344円×10時間(残業時間)=23,440円
つまり、支払うべき残業代は23,440円となります。
端数が出た場合はどうする?
計算すると、1円未満の端数が出ることがあります。その場合、
50銭未満は切り捨て、50銭以上は1円に切り上げる
という明確なルールがあります。
これは、
- 月給から時給の算出時
- 時給から残業単価の算出時
の2回の計算時に適用されます。
今回の例の場合、
月給の算出時(1,875円)は端数がないので、処理不要です。
一方で、残業単価は2,343.75円、つまり端数は75銭なので、1円を切り上げて2,344円が残業単価になります。
そのため、10時間残業したら
2,344円(残業単価)×10時間(残業時間)=23,440円
となります。
固定残業代の場合はどうやって計算する?
固定残業代とは、実際の残業時間の長短にかかわらず、あらかじめ定めた一定時間分の残業代を毎月の給与に含めて定額で支払う制度です。
「○○時間分残業したとみなして」計算をするため、別名、「みなし残業代」とも呼ばれます。
例えば、「毎月20時間残業する前提にします!」と会社で定めたならば、本当の残業時間が5時間でも10時間でも、20時間分の残業代が支払われます。
もちろん、あらかじめ定めた時間を超過した場合、その超過分は追加で支払わなければいけません。固定残業時間が20時間の人が、25時間残業したら5時間分の残業代は支払う必要があります。
20時間分の固定残業代の計算例
では、所定労働日数240日(所定休日125日)、月給30万円、固定残業時間20時間の場合の計算方法を見ていきましょう。
前もって決まっている時間分の残業代を支給するだけなので、普通の残業代の計算方法と変わりません。
先ほどの例の通り、時給1,875円で、固定残業時間を20時間とした場合、
1,875円(時給)×1.25=2,343.75円=2,344円(端数繰り上げ)
2,344円(残業単価)×20時間(固定残業時間)=46,880円
つまり、固定残業代は46,880円となります。
固定残業時間を超えた場合は?
ここはかなり勘違いポイントなので注意してください。
もし、固定残業時間を超えて時間外労働をした場合は、超えた時間分を支給しなくてはいけません。
固定残業代は、あくまでも前もって決めた残業時間分を払っているだけ。その時間を超えたら当然その超過分は支払う必要があります。
問題にチャレンジ!
ここまでの知識で、残業代の計算方法は完璧にできます。ここからは実際に問題を解いてみましょう。
第1問
年間の所定休日が120日、労働時間8時間、月給25万円の労働者、残業時間5時間の場合の残業代はいくらですか?
回答
- 年間の所定労働日数:365日-120日=245日
- 月平均所定労働日数:245日÷12カ月=20.4166...
- 月平均所定労働時間:20.4166...×8時間=163.33...
- 時給:250,000円÷163.33...時間=1,531円(繰り上げ)
- 残業単価:1,531円×1.25=1,914円(繰り上げ)
- 残業代:1,914円×5時間=9,570円
第2問
年間の所定休日が115日、労働時間8時間、月給30万円、固定残業時間が30時間の労働者の固定残業代はいくらですか?
回答
- 年間の所定労働日数:365日-115日=250日
- 月平均所定労働日数:250日÷12カ月=20.833...
- 月平均所定労働時間:20.833...×8時間=166.66...
- 時給:300,000円÷166.66...=1,800円
- 残業単価:1,800円×1.25=2,250円
- 固定残業代:2,250円×30時間=67,500円
第3問
年間の所定休日が120日、労働時間8時間、基本給20万円、固定残業代2万円の場合、固定残業時間は何時間ですか?
- 年間の所定労働日数:365日-120日=245日
- 月平均所定労働日数:245日÷12カ月=20.4166...
- 月平均所定労働時間:20.4166...×8時間=163.33...
- 時給:200,000円÷163.33...=1,224円(繰り下げ)
- 残業単価:1,224円×1.25=1,530円
- 固定残業時間:20,000円(固定残業代)÷1,530円=13.07時間
よくある質問
残業代の計算で、1分単位の端数は切り捨ててよいですか?
原則として、1日ごとの労働時間は1分単位で計算し、切り捨てはできません。ただし、1か月の時間外労働の合計に1時間未満の端数がある場合に限り、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理が認められています。
管理職には残業代を払わなくてよいですか?
「管理職」という肩書だけでは、残業代を支払わなくて良い「管理監督者」には当たりません。経営への関与、勤怠の裁量、地位にふさわしい待遇など、あくまでも実態を判断します。いわゆる「名ばかり管理職」は、未払い残業代の典型的なトラブルです。
残業代の請求は、いつまで遡れますか?
賃金の請求権の時効は、原則は5年です(2020年4月の法改正により、2年から延長されました)。ただし、経過措置として当分は3年となっているので、注意してください。
Q. 年俸制なら残業代は不要ですか?
不要ではありません。年俸制でも、時間外労働には割増賃金の支払いが必要です。
まとめ:残業代の計算は、順番に考えれば難しくない!
いかがだったでしょうか?
残業代の計算は、順番通りに考えていけば難しくありません。
しかし、給与計算ツールなどを使っていると、いつの間にやら変な入力を行って間違ってしまっている場合があります。そのため、アナログではありますが、一度手を使って計算してみるのがおすすめです。
残業代については、もう一つ論点があります。こちらは関連記事に載せておきますので、そちらもぜひ見てみてください!