
「助成金は社労士に頼まないと申請できない」——実はこれ、多くの経営者が抱く大きな勘違いです。中小企業診断士として現場に立つ中で、この誤解のせいで助成金活用をあきらめている会社を何度も見てきました。本記事では、助成金・補助金の「自社申請」がなぜ問題ないのか、なぜ多くの会社が専門家に依頼しているのか、そして2026年の法改正で何が変わったのかを、法律の条文も交えながらわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 助成金は社労士でなくても申請できるという法律上の根拠
- 「本人申請」と「申請代行」の違い、それぞれの適法性
- 社労士に依頼する会社が多い本当の理由
- 助成金以外にも自社でできる手続き(補助金・登記・民事裁判)の範囲
- 【2026年最新】行政書士法改正で補助金コンサルに何が起きたか
- 中小企業診断士にできること・できないことの整理
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みなさんこんにちは!中小企業診断士の春原です。
今回のテーマは「助成金」です。中小企業であればほぼすべての会社が利用していると思いますが、これについて勘違いをしている経営者が大変多いことに気づきました。
今回はそんな経営者が抱えがちな「勘違い」について、解説していきます。
助成金は社労士しか申請できない!?
まずは結論から!
助成金は社会保険労務士(以下、社労士)でなくても申請できます。
これは多くの経営者が勘違いしていることですが、助成金は社労士以外でも申請ができるのです。
色々な企業で「これ助成金使ったらどうですか?」と提案することがありますが、「うち社労士いないし」「社労士の先生が高すぎて・・・」などということをよく聞きます。
「自社でやってみたらいかがですが?」と聞くと、
「うちじゃできない」「やれる人がいない」
と言うかと思いきや、
「え、社労士以外やっちゃいけないんだよね???」
と話すから驚きです。
社長、社労士以外でも助成金の申請はできるんですよ!
自社が申請するのは問題ない!
自社の助成金について、自社で書類作成・申請するのは、まったく問題ありません。
というより、本来はそうすべきなんです。個人の場合でも、給付金などを受け取る場合では自分で申請すると思います。コロナの時、10万円もらいましたよね。これと全く同じで、助成金も自社でやるのが通常なのです。
これを、本人申請といいます。
しかし、助成金の申請をしたことがある方ならわかると思いますが、これがとても面倒くさい。要件も色々ありますし、募集要項もかなり長いので、慣れている人でも普通に面倒に思えます。
このときに出てくるのが、社労士なのです。
つまり、自社で申請するのが面倒だから社労士に任せるという、ある意味で特例的な話なのです。
なぜ、社労士なのか?
これは、助成金の申請代行は社労士(+弁護士)のみしかできない、という法律があるからです。
(社会保険労務士の業務)
第二条 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
一 別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて申請書等(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、再審査請求書その他の書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識できない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)をいう。以下同じ。)を作成すること。
一の二 申請書等について、その提出に関する手続を代わつてすること。
(業務の制限)
第二十七条 社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第二条第一項第一号から第二号までに掲げる事務を業として行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合は、この限りでない。
無資格者が申請代行はできないので、「無資格者=自社でもできない」というイメージになっていますが、できないのは申請代行です。本人申請はまったく問題ありません。
実は、「無報酬」であれば、無資格者が申請代行をしても違法にはなりません。これを「無償業務独占」といいます。気づいた方もいるかもしれませんが、第27条の業務の制限に「~他人の求めに応じて報酬を得て、~業として行ってはならない」とあります。つまり、報酬を得なければ問題ないのです。
他にもある!自社でやっていいこと
今回は助成金についてでしたが、他にも自社でやっても問題ないことがあります。
補助金申請
コロナ渦では無資格者が所かまわず申請の代行をしていましたが、本来申請代行を行って良いのは行政書士だけです。もちろん、禁止されているのは代行なので、自社が自社の補助金を得るために申請する本人申請は問題ありません。
登記の申請
法人の設立や登記事項の変更申請などは、司法書士がメインで申請代行を行っています。ただし、これも「申請代行」とだけあって、申請は本来自社でやるべきものです。ただし、これはこれで手続きや書類作成が面倒なので、多くは司法書士に任せています。
民事裁判
裁判は弁護士しかできないと思われがちですが、自社が当事者なら弁護士に依頼しなくても問題ありません。労働審判や損害賠償請求、仮差押えの申し立てなどは自社でやっても良いのです。
ちなみに、登記申請と民事裁判については、無報酬でも代行してはいけません(これを「有償業務独占」といいます)。これが、補助金申請や助成金申請と大きく異なるところです。
【2026年最新】行政書士法改正で、補助金の扱いが変わりました
ここで一つ、経営者の皆さんに必ずお伝えしておきたい最新情報があります。
補助金についても、これまでは助成金と似たようなロジックで「無償なら代行してもらってもOK」と説明されることが多くありました。しかし、2026年1月1日に施行された改正行政書士法により、この前提が大きく変わっています。
改正のポイントは、行政書士法第19条の制限規定に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が加わったことです。これにより、補助金申請書類の作成代行を「コンサルティング料」や「会費」といった名目で行っていたケースも、実質的に報酬性があれば違反とみなされることが明確になりました。
つまり、
- 自社が自社のために申請書類を作る「本人申請」は、引き続きまったく問題ありません
- しかし、第三者が報酬(名目を問わず)を得て補助金の申請書類を作成・提出する行為は、行政書士(または行政書士法人)以外は認められません
これまで様々なところでグレーゾーンだった補助金申請ですが、この改正により一気に厳しくなりました。正直、あまり経営者の方には関係なさそうな論点ではありますが、依頼した企業にもリスクはあるので、頭の片隅に置いておいておきましょう。
よくある質問
助成金を自社で申請する場合、資格がなくても罰則はありませんか?
自社が自社のために申請する「本人申請」は社労士法の規制対象外です。資格の有無にかかわらず問題ありません。規制されているのは、他社の代わりに報酬を得て代行することです。
無資格の知人やコンサルタントに助成金の申請を無償で手伝ってもらうのは違法ですか?
報酬が発生しなければ、社労士法上は違法にはなりません(無償業務独占)。ただし実質的に謝礼などの対価性がある場合は、報酬とみなされる可能性があるため注意が必要です。
補助金も助成金と同じルールで考えて大丈夫ですか?
いいえ、異なります。2026年1月施行の改正行政書士法により、名目を問わず報酬を得て補助金の申請書類を作成する行為は違反となる可能性が明確になりました。本人申請は引き続き可能ですが、第三者への有償依頼は行政書士に限られます。
自社で申請する場合、どんな点に注意すればいいですか?
「公募容量をしっかりと読むこと」「スケジュールを把握すること」です。別記事で解説しますが、AIを使うとかなりやりやすなので、こういったツールも使っていくようにしましょう。
おわりに
助成金でも補助金でも、本来は自社でできた方が良いと思っています。自社でやれば満額もらえるお金を、専門家に依頼することで安くない金額を支払わなければならないわけですからね。
ただし、中小季語業では人的リソースが限られているのも事実ですし、ノウハウも多くありません。そのため、最初は専門家に依頼し、徐々に自社できるようにしていくことが重要だと考えています。
春原中小企業診断士事務所では、最終的に自社で補助金や助成金の申請ができるような体制づくりやノウハウの研修も行っていますので、ぜひご相談ください!