
「ちゃんと言ったのに、全然違う結果になっていた」——そんな経験、ありませんか? 実は、指示が伝わらない原因の多くは、話し方のテクニック不足ではなく、話し手と聞き手の「前提のズレ」にあります。中小企業診断士として数々の現場を見てきた経験と、実際に体感できる簡単なワークをもとに、「伝わる話し方」の正体を解き明かします。
この記事でわかること
- 「指示したのに伝わらない」が起こる本当の原因
- 「論理的に話す」だけでは伝わらない理由
- 同じ言葉でも解釈が人によってバラバラになるメカニズム
- 中小企業の現場でこそ伝達ミスが経営リスクに直結する理由
- 明日から使える「伝わる話し方」3つの実践ポイント
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みなさんこんにちは!中小企業診断士の春原です!
今回は、「相手に意図をしっかりと伝えることの難しさ」について解説します。
中小企業診断士の仕事の基本は「話す・書く・聞く・読む」の4つです。
お客様の課題を聞き、提案し、調べるために読み、事業計画書を書く…。
どれも私たちにとって欠かせない能力です。今回はその中から「話す」に絞って解説します。
この写真について1分で伝えてください
早速ですが、ひとつゲームをしてみましょう。

ルール
- - 3名以上で行う
- 1名が説明役、1名が質問役、残りは聞き役
- 説明役は、写真について1分で説明する(話すだけ。身振り手振りや絵で描くのは禁止)
- 聞き役は写真を見てはいけない。説明だけを聞く(メモは可)
- 1分後、質問役が写真について質問する
- 聞き役は、説明された状況を絵に描いてもよい
- 最後に、聞き役に写真を見せる
質問例
- どんな場所?
- 何人いる?
- 何をしている?
- 男性と女性何人ずつ?
- みんなどんな服を着ていた?
- 新郎は新婦のどっち側に立っている?
いかがでしたか??
聞き役の方は、ご自身が思い描いていた状況と写真を見比べてみてどうでしたか?
おそらく、驚かれる方が多いのではないでしょうか。
そして、説明役の方は、聞き役が思い描いていた絵をかななり乖離があったことに驚かれたのではないでしょうか。
これを何グループか作ってやるとよくわかるのですが、人によって説明の仕方が全く違います。男女の人数など細部から説明する人もいれば、「結婚式です!」と状況から説明する人もいるのです。
理解の仕方は人によって違う
ここでポイントになるのが、複数いる聞き役です。説明役は1人なので、全員が同じ説明を受けています。にもかかわらず、「え?それ言ってたっけ?」「新郎は右にいたよね?」といった会話が生まれたはずです。
つまり、同じ言葉でも、何を重視するか、どんな状況を思い浮かべるかは人によって違うのです。
何かを指示した際や何かを話した際に、
「え、なんでそうやって解釈したの?」
「そういう意味で言ってないんだけど…」
「前も話したじゃん」
といったことは多くの人が経験しているのではないでしょうか。
説明する側が「こう解釈するのが当然だ」と思って話しても、後から「なんでそうなった?」となるのは、根本の前提がずれている可能性が高いのです。
支援先でも起きた「伝わっていない」|例え話が指示になった
実は、これと同じことが仕事の現場でも起きたことがあります。
飲食製造企業の営業支援をしていたときの話です。
その会社はBtoBの事業ですが、他社の事例では、お客様がSNSを見て問い合わせをしてくるケースがあるとのことでした。そこで、当社もSNSに力を入れようという話になりました。
SNSはすでに運用していたものの、投稿内容がお客様の求めるものではないことは明らかでした。そこで私は、「お客様が欲しい情報を載せるべきではないか」と提案しました。
ところが、「お客様が欲しい情報」では抽象的でわかりにくい、という声が上がりました。そこで、私はこう伝えました。
「たとえば、僕が営業に行ったときにその投稿をお客様に見せて、『なるほど!これはいいですね』と思ってもらえるような内容がいいんじゃないですか?」
すると担当者の方は「わかりました!」と言い、SNSの投稿が始まりました。しかし、しばらくすると投稿がぱたりと止まってしまいました。理由を聞いてみると、返ってきたのは衝撃の答えでした。
「春原さんがお客様に見せてくれないから…」
たしかに「お客様に見せに行ったら」という話はしました。しかし、それはあくまでも例えです。私が伝えたかったのは「お客様が欲しい情報を投稿しよう」ということでした。
この出来事で痛感したのは、話し手が「例え」のつもりで話したことが、聞き手には「指示」として届くことがあるという点です。しかも、担当者の方は決してサボっていたわけではありません。私の言葉を、誠実に受け取っていたのです。
「論理的に話す」が通じない現実
私が話すときに執着していたのが「論理的に話すこと」でした。
実際、かなり伝わりやすいようで、「話がわかりやすいね」と言われたことも何度もあります。まず話のゴール(主張)があり、前提を置き、理由や根拠を使って一つひとつ筋道を立てて説明していく。イメージは階段を上る感覚に近く、一段一段積み上げて最後にゴールにたどり着きます。
しかし、これが通用しない人にはまったく通用しない。
1段目をクリアして、2段目をクリアして…。そして、ゴール直前の9段目を上ったときに、急に言われるのです。
「2段目についてなんですけど…」
それさっき話したよね!?
論理的に話しても伝わらない。論理とはこんなにも無力なのかと、思わずにはいられませんでした。
日本語なのに通じない———「国語力」という隠れた壁
同じ言語で話をしているのになぜ通じないのか、というのが私の中で常々疑問でした。
そんな中、ある動画を見て驚愕しました。
これは、カリスマホストである「軍神」が若手ホストの教育の一環として行っている「国語ドリル」です。しかも、小学校3年生の国語ドリルの読解に取り組ませています。
「さすがに解けるだろ」と思っていましたが、意外と解けない人が多いことに驚きました。
これ、実はかなり怖いことなのです。同じ言語を使っているからこそ、自分や部下の「国語力」の低さには気づきにくい。そして、日常生活で困ることが少ないため、本人が課題として自覚する機会もほとんどありません。
「同じ日本語なのに通じない」という違和感の正体は、こうした国語力(読解力・要約力)の差であるケースが、想像以上に多いのです。
話すときに意識すべき3つのこと
とはいえ、聞き手のせいにしていても何も進みません。国語力に差があったとしても、どうすれば伝えられるのか。これまでの経験や実践の中で見つけた方法を3つご紹介します。
何度も繰り返す
子供に「これ欲しい!これ欲しい!これ欲しい!」と何度も言われたら、さすがに「欲しいんだな」と伝わりますよね。
これ、単純でありながらかなり効果があります。実は、カリスマ的な発信力のある政治家が好んで使う方法でもあるです。
結局のところ、「論理的な話」も、見方を変えれば主張を繰り返しているだけともいえます。具体例も理由も逆説も、すべて主張の正しさを補うための道具であり、「主張」を言い換えているにすぎません。 論理の階段も同じです。3段目まで進んだら、もう一度1段目と2段目の話に戻る。これを繰り返すだけでも伝わりやすくなります。
できるだけシンプルに
誤解なく話そうと思うと、つい話が長くなります。
「前提はこうで、ただこういう見方もあるけど、こうやって考えるとこうで~」
しかし、話を聞いている側は、話が長ければ長いほど迷子になりがちです。そのため、主張部分はできるだけ端的に伝えましょう。
もちろん、色々な内容を踏まえて話さなくてはいけない場面もあるでしょう。そのときには、「一文を短くすること」です。これは分かりやすい文章を書くときに言われますね。
先の例でいえば、
「前提はこうです。ただ、こういう見方もあります。なので、こうやって考えると~」
話すときも、短く、シンプルに。これが重要です。
相手の前提を理解する
突き詰めると、これが一番大切だと思います
国語力もそうですが、生まれた環境や過ごしてきた人生によって、人の物事の捉え方は大きく異なります。人によって前提が全く違うのです。
例えば、先ほどの「結婚式」の写真。
「結婚式でフラワーシャワーを浴びている!」
と言われて、和装の結婚式を思い浮かべる人もいます。その人にとって結婚式は和装で行われるものであれば、全く間違っていません。
つまり、その人の人生や価値観、環境といったものが、コミュニケーションに大きく影響しているのです。これをすべて理解するのはかなり難しいですが、話す側が「前提が違うんだ」と意識しているだけでも、相手への話し方や伝え方が大きく変わるのではないでしょうか。
よくある質問
部下に指示が伝わらないのは、部下の能力の問題ですか?
それは否定できません。しかし、伝える側に問題があることも十分あります。相手の能力に合わせて、こちらも伝え方を変える工夫が必要です。
論理的に話しているのに伝わらないのはなぜですか?
相手にとって、論理の階段に飛躍がある場合や、論理的な会話に慣れていない場合などがあります。論理的に話すことは大切ですが、必ずしも伝わるわけではありません。
指示が伝わったかどうかを確認する良い方法はありますか?
まずは、角度を変えた質問をしてみることです。理解できていたら答えられそうな質問をしてみましょう。また、そのときは理解していても、時間がたつと理解の仕方が変わっていることもあるので、途中で確認を挟むのも良いでしょう。
社内のコミュニケーション改善は、中小企業診断士に相談できますか?
もちろんです。組織の中にはいり、何が問題かを明確にしたうえで、解決していきます。
まとめ|「伝える」は本当に難しい
人に何かを伝え、理解してもらうことは、本当に難しいものです。
新卒採用の選考にはSPIなどの適性検査があり、一定の国語力を測ることができます。その意味で、理にかなった仕組みだと感じます。しかし、中小企業では、そうした試験を設けて基準を設けるほどの余裕がないのが実情です。
だからこそ、社員の教育はもちろん、指示を出す側の伝える力を高めることも欠かせないと、私は考えています。
この記事のポイント
- 同じ言葉でも、人によって受け取り方は違う
- 論理的に話しても伝わらないことがある
- 国語力の差は自分では気づきにくい
- 繰り返す/シンプルに/相手の前提を理解する
「伝わらない」を一人で抱え込まないでください
「指示したのに動いてくれない」「社内で話が通じない」。そんな悩みの多くは、人の問題ではなく、伝え方や仕組みの問題です。春原中小企業診断士事務所では、現場の状況を丁寧にお聞きしたうえで、社内コミュニケーションの改善をご支援しています。お困りの際は、お気軽にご相談ください。