
「今回の面接はすごくよかった」と手ごたえを感じた翌日に、内定辞退の連絡が届く——そんな経験をした経営者・採用担当者は少なくありません。今の採用市場では、会社は求職者を選ぶ側ではなく、常に「選ばれる側」です。本記事では、中小企業診断士の立場から、なぜ良い人材ほど逃げてしまうのかを整理したうえで、面接で意識すべき3つの流儀と、逆にやってしまいがちなNG行動について解説します。
この記事でわかること
- 採用市場が「会社が選ぶ側」から「会社が選ばれる側」へ変化した背景
- 面接の初回で行うべき「会社のプレゼン」のコツと、避けるべき伝え方
- 求職者に「手ごたえ」を感じてもらうためのコミュニケーションの型
- 求職者自身の「未来」を面接で見せることの重要性
- 圧迫面接・雑談過多・即日内定など、よくある面接の失敗パターン
- 面接で避けるべきNG質問と、そのリスク
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みなさんこんにちは!中小企業診断士の春原です!
「今回の面接はすごくよかったな!印象もとても良いし、ぜひ一緒に働きたい!」
そう思った翌日、
『内定辞退のお詫び』
というメールが届いた経験、ありませんか?私はよくありました。
その面接の仕方、本当によかったのでしょうか?
今回は、そんな「選ばれる企業」になるための面接方法を解説します。
会社は常に「選ばれる側」
まず一番意識してほしいのは、会社は「選ばれる側」ということです。一昔前までは会社が選ぶ側でした。求人を出せば大量の履歴書が届き、その中からできるだけ優秀な人材を見つけようとしていた時代です。
しかし、2014年頃から、求職者数の減少や人手不足を背景に、強烈な「売り手市場(求職者優位)」となっています。今や「履歴書が届くこと」すら稀で、求人サイトに掲載しても「全く反応がない」なんてことは珍しくありません。
そのような中で、応募してきた求職者、中でも「この人、良いな!」と思った人を逃すのは、かなりもったいないことです。特に中小企業は、大企業のように条件面(給与水準や知名度)で真っ向勝負をするのが難しい分、面接そのものを「自社の魅力を伝える場」として最大限に活用する意識が欠かせません。
面接ですべきこと3選
それでは、面接の際はどのようなことを意識すれば良いのでしょうか?ここでは、必ず押さえておきたい面接の流儀3つを紹介します。
①やるべきは会社のプレゼン
面接は基本的に複数回行われますが、初回で行うべきは「会社のプレゼン」です。
求職者にとって就職は一大イベントです。ある意味、会社に人生を投じるわけですから、「この会社に私の人生を投じる価値はあるか?」という考え方になります。そのようなときに、「実態がよくわからない会社」に入るでしょうか?
- 自社はどんな会社?
- どんな目標を持っている?
- どんな強みがある?
- いいところは何?
- 従業員はどんな雰囲気?
- どんな人が多い?
などなど、求職者がその場で「働くイメージ」がわくような、そんなプレゼンができるととても良いです。
「うちは普通の会社だから、特にアピールできることがない」と感じる経営者の方もいますが、魅力のない会社は基本的に存在しません。給与水準が突出していなくても、人間関係の良さ、残業の少なさ、社長との距離の近さや風通しの良さなど、今その会社で働いている社員が辞めずにいる理由には、必ず何らかの答えがあります。まずは、その理由を自分の言葉で言語化しておくことが、会社のプレゼンの土台になります。
パワポをなぞるのはあまりおすすめしない
ただし、パワポをなぞって自社の説明をするのはできるだけ避けましょう。なぜなら、面接はひとり語りの時間ではないからです。実際に求職者側として、そういった面接を経験するとわかりますが、「自分を見ないで、一方的に話されているな」という気分になります。
もちろん、補助資料として用意するのは問題ありません。ただし、あくまでも面接はコミュニケーションの場。インタラクティブな「話し合い」を意識するようにしましょう。
②求職者には気持ちよくなってもらう
面接後、求職者に「すごく手ごたえがあったな!」と思ってもらえるような面接を意識しましょう。というのも、もし「この人よりもこの人の方がいいかな」と思ったら、不採用にすれば良いのです。しかし、こちらが判断する前に求職者から「この会社はダメだな……」と思われては当然意味がありません。
「気持ちよくなってもらう」とは、「無理におだてる」といったことではありません。上述したように「手ごたえがあった」と思ってもらうことが重要です。
例えば……
- 話に対してしっかりとうなずく
- 好意的な反応をする(「なるほど」「それはいいですね」など)
- 誤りをいちいち指摘しない
- 笑顔で対応する
- 答えられなくても「問題ないですよ!」と励ます
などです。挙げてみればわかりますが、円滑にコミュニケーションをとるために普段やる当たり前のことです。後述しますが、面接になるとこの当たり前ができなくなる人がとても多いので、気を付けるようにしましょう。
③求職者に未来を見せる
3つ目のポイントは、「その求職者が、自社でどんな未来を歩めるのか」を具体的に見せることです。
会社のプレゼン(①)が「会社そのもの」の魅力を伝えるものだとすれば、こちらは「その人自身」にとっての魅力を伝えるものです。「入社してくれたら、あなたにはこんな仕事を任せたい」「1〜2年後には、こういう役割を担ってもらえたら嬉しい」といったように、求職者本人を主語にした未来像を、できるだけ具体的に伝えるようにしましょう。
抽象的に「頑張り次第でキャリアアップできます」と言われるより、「まずはこの業務から入ってもらい、半年ほどで〇〇を任せられるようになったら、△△のポジションも見えてきます」といった、解像度の高い話をされる方が、求職者にとっては「この会社で働く自分」をイメージしやすくなります。
「過去・現在・未来」を意識した質問設計
未来を見せるためには、まず求職者自身の「過去(これまでの経験)」と「現在(今何を大事にしているか)」を丁寧に聞き出すことが前提になります。これまでの経験で何にやりがいを感じてきたか、今の仕事選びで何を重視しているかを聞いたうえで、それと自社での未来をつなげて話すことができれば、単なる会社説明よりもずっと説得力のある「未来像の提示」になります。
よくある面接での失敗
ここからは、面接官がやってしまいがちな3つの失敗について解説します。良かれと思ってやっていることが、実は逆効果になっているケースも少なくありません。
①圧迫面接(論外)
当然ですが、これをやって許される企業はほぼありません。最悪、SNSで拡散される可能性もあるので、このような面接は絶対に辞めましょう。
特に気を付けたいのが、圧迫面接とはならずとも、上からの目線の面接になることです。求職者は下から来ますので、勘違いをして、態度が横柄になる人がいます。他にも、タメ口、目を合わせない(書類だけ見ている)、腕や足を組む、背もたれによりかかるなど、自身が求職者、もしくは客先であれば絶対にしないようなことは、面接の場でもしてはいけません。
「そんな当然のこと……」と思われますが、結構やっている人いますよ。無意識にやっているだけに気づけないので、この辺りはより意識するようにすると良いでしょう。
②雑談をしすぎる
これは社長が面接する際によく見かけます。もちろん、雑談はとても重要です。特に、面接官が社長ともなれば、相手も相当緊張しています。また、雑談ができるかどうかは、求職者のコミュニケーション能力を図る上でも重要です。
ただし、やりすぎるのは禁物です。特に、社長が一方的に話し出してしまうケースが多く、求職者としては「よく話す人だけど、この人大丈夫か?」という不安感につながります。そして厄介なことに、社長自身が喋りまくるのを当然求職者は止めないので、「話を聞いてくれてすっきり!」という感じになり、なぜか「この求職者は良い!」となります。これはミスマッチもミスマッチなので、気を付けるようにしましょう。
③その場で採用を言い渡す
「はやく人が欲しい」
このような気持ちから、面接で良いなと思った求職者に、その場で内定を出す方がいます。しかし、一度立ち止まってください。「早く内定をくれたから」という理由で選ぶ求職者はほとんどいないですし、逆にそのような理由で入ってくる求職者はあまり採用しない方が良いです。これも、ご自身が求職者の立場になって考えたらわかると思います。
どうしても入りたい企業があったとして、内定通知が遅いからといって内定が早い企業に行くでしょうか?私だったら内定が遅くても待ちます。
逆に、内定が早いからといった理由で内定を承諾する場合、その裏にはどんな思いがあるのでしょうか?恐らく、「どこでもいいから早く決めたい」といった軽い気持ちではないでしょうか。
もちろん、「本当にあなたが欲しい!」「あなたでなければダメなんだ!」という熱い思いがあれば別です。しかし、ただただ「はやく人が欲しい」という理由でその場で内定を出すと、足元を見られますし、その後のミスマッチにも繋がります。
面接で避けたいNG質問にも注意
面接の雰囲気づくりと合わせて、質問の「内容」そのものにも注意が必要です。本来、選考とは関係のないはずの家族構成や結婚の予定、思想・信条、出身地や本籍などに関する質問は、求職者に不信感を与えるだけでなく、就職差別につながるおそれがあるとして避けるべきとされています。
こうした質問は、面接官に悪気がなくても、求職者からは「この会社は大丈夫だろうか」という不安材料として受け取られてしまいます。事前に質問項目をある程度準備しておき、業務や適性に関係のない質問をしていないか、面接官同士でチェックし合える体制を整えておくと安心です。
ちなみに、この『面接で聞いていはいけないこと』については、厚生労働省からガイドラインが出ていますので、参考にしてみてください。
厚生労働省:『採用選考時に配慮すべき事項』
よくある質問
Q. 求職者に良い印象を持ってもらうことと、しっかり見極めることは両立できますか?
両立できます。「気持ちよくなってもらう」というのは、質問を甘くすることや、評価を甘くすることとは別の話です。話しやすい雰囲気をつくったうえで、求職者本来の考えや経験を引き出し、その内容をもとに冷静に評価するのが理想的な進め方です。むしろ話しやすさと見極めの厳しさは、両立させるようにしましょう。
Q. 社長が面接すると、なぜミスマッチが起きやすいのですか?
社長自身が話す量が多くなりすぎ、求職者の話を十分に聞けていないケースが多いためです。話をたくさん聞いてもらえた求職者側の満足度と、その人が自社に合っているかどうかは、本来別の軸で判断すべきものです。社長が面接する場合は特に、意識して求職者の話す時間を確保するようにしましょう。
Q. 内定を出すタイミングは、早いほうが良いのでしょうか?
必ずしもそうとは限りません。「内定が早いから」という理由だけで入社を決める求職者は多くなく、拙速な内定はミスマッチにつながることもあります。それよりも、丁寧な見極めと「あなたに来てほしい」という明確な意思表示を、タイミングを問わずしっかり伝えることの方が重要です。
おわりに
以上が、「選ばれる企業」になるための面接の流儀3つと、よくある失敗3つでした。
面接は、会社が求職者を一方的に評価する場ではなく、求職者もまた会社を評価している場です。この視点を持てているかどうかで、面接の進め方はまったく変わってきます。
「良い人材だと思ったのに、内定を辞退されてしまった」という経験がある方は、一度ご自身の面接の仕方を振り返ってみてください。会社のプレゼンはできていたか、求職者に手ごたえを感じてもらえていたか、そしてその人自身の未来を具体的に見せられていたか——この3つの視点を意識するだけでも、求職者からの見え方は大きく変わるはずです。もし自社の面接フローに不安がある場合は、お気軽にご相談ください。