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中小企業のIT化が失敗する理由と正しい進め方|7つのステップで徹底解説

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中小企業の多くがすでにデジタル化に取り組んでいるにもかかわらず、その効果を十分に実感できていないのが実情です。原因の多くは、「何のシステムを入れるか」というシステム選定から考え始めてしまい、その手前にある「課題の可視化」や「業務フローの理解」を飛ばしてしまっていることにあります。本記事では、中小企業診断士として実際の現場で行っているIT化の進め方を、7つのステップに分けて解説します。あわせて、IT化を進める際に意識すべき注意点や、IT人材の育成についても取り上げます。

この記事でわかること

  • 中小企業白書のデータから見る、IT化の現状と効果が出ていない実態
  • 多くの企業がIT化でつまずく共通の原因
  • 課題の可視化から本導入までの、実践的な7つのステップ
  • システム導入後に「使われないシステム」にしないための注意点
  • 専任のIT担当者を置けない中小企業が、IT人材をどう育成・確保するか
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みなさんこんにちは!中小企業診断士の春原です。

以前の記事で『DXが失敗する理由5選~中小企業の現場で見た「進まないDX」の正体~』を公開しました。今回は、そこからさらに踏み込んで、「では、どのように社内IT化を進めればよいのか?」をステップバイステップで解説します。

IT化ができている企業は少ない

早速ですが、中小企業の状況を見てみましょう。以下は、『令和6年度版 中小企業白書』の第1部第1章第5節の抜粋です。

デジタル化については、「段階2:アナログな状況からデジタルツールを利用した業務環境に移行している状態」が5割以上と最も多く、段階3:デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる状態までを含めると、8割以上になります。このことから、ほとんどの中小企業でデジタル化を推進しているといえます。

では、その効果のほどはどうなのでしょうか?以下は、デジタル化の取組の効果を調査したグラフです。先ほどのデジタル化の取組段階別に、デジタル化の効果を示しています。

最も母数の多かった段階2において、すべての面で「あまり効果を感じていない」「ほとんど効果を感じていない」が約6割を占めています。段階3についても、約4割があまり効果を感じていないという結果になっており、多くの企業でIT化がうまくいっていない現状がうかがえます。

IT化がうまくいかない理由

現場でよく見られる、IT化がうまくいかない理由には、次のようなものがあります。

  • システム導入が目的になっている
  • 業務に合わない「汎用システム」を入れている
  • 業務プロセスや仕組みが見える化されていない
  • 既存システムとの衝突
  • システムがルール通り運用されていない

これらの理由に共通しているのは、「順序を間違えている」ということです。多くの会社は、「何のシステムを入れるか」から考え始めてしまいます。しかし本来は、その前にやるべきことがいくつもあります。ここからは、私が実際の現場で行っているIT化の進め方を、7つのステップに分けて解説していきます。

IT化の具体的なステップ

それでは、上記の理由を踏まえた上で、IT化をどのように進めれば良いか、具体的なステップで解説していきます。

ステップ1:課題の可視化

まずは、自社にどんな課題があるのかを、具体的に洗い出すところから始まります。従業員数が100名以下の会社だと、社長自身が現場業務を行っていることが多く、社員との距離も近いため、「毎回こんな話があがる」「従業員から不満がでている」といった現場の声が常に耳に入ってきます。そのため、なんとなく課題を把握している場合が多いです。

しかし、ここで注意したいのが、「なんとなくわかっている」という状態で進めないことです。ある程度の課題感は大切にしつつも、それをベースに、実際その業務に関わる従業員へのヒアリングも実施するようにしてください。

具体的には、「時間がかかりすぎている作業は何か」「ミスが起こりやすい作業は何か」「属人化していて、その人がいないと回らない業務は何か」といった観点で、課題を一つひとつ書き出していきます。

また、この段階で大切なのは、「システムで解決できそうかどうか」を最初から考えすぎないことです。まずは純粋に、現場が困っていること・非効率だと感じていることを、幅広く拾い上げることを優先してください。ここで拾いきれなかった課題は、後のステップでどれだけ良いシステムを導入しても、解決されないまま残ってしまいます。

ステップ2:業務フローの理解(最重要)

課題が見えてきたら、次はその課題が発生している業務の流れを、丁寧に整理していきます。このステップが最も重要です。

例えば「受注から納品までの流れ」であれば、「誰が」「どのタイミングで」「何を使って」「どんな判断をしながら」作業を進めているのかを、一つひとつ書き出していきます。口頭でのヒアリングだけでは、担当者本人も無意識に省略してしまっている手順があることが多いため、可能であれば実際の作業に同席させてもらい、目で見て確認することをおすすめします。

この業務フローの整理こそが、先ほどお伝えした「業務プロセスや仕組みが見える化されていない」という失敗理由への、直接的な対策になります。ここを丁寧に行わずにシステム選定に進んでしまうと、実際の業務とシステムがかみ合わない、という事態を招いてしまいます。

場合によっては業務フローや仕組みの変更も必要

このステップで同時に行いたいのが、「この業務フローが本当に適切か?」という判断です。特に業歴が長い企業だと、「昔からこうやってる」といった考え方で、非効率な方法が浸透していることもあります。担当者自身、何の疑問も感じずに行っている場合も多いので、業務改善の視点を持ちながら行うのが重要です。

ステップ3:IT化する業務の選定

すべての業務を、一度にIT化しようとする必要はありません。むしろ、そのやり方は失敗のもとです。

ステップ1・2で洗い出した課題と業務フローの中から、「効果が大きく、かつ実現しやすいもの」を優先的に選び、IT化する業務として絞り込んでいきます。判断基準としては、「発生頻度が高い業務か」「複数人が関わっており、属人化のリスクが高い業務か」「ミスが起きたときの影響が大きい業務か」といった観点が参考になります。

一度にあれもこれもと手を広げてしまうと、現場の負担が急激に増え、混乱を招きます。まずは、小さく始めて成功体験を積み、その後で対象範囲を広げていく方が、結果的にIT化のスピードは早くなります。

ステップ4:システムの選定

ここでようやく、具体的なシステムやツールの選定に入ります。多くの会社が最初に取り組んでしまうステップですが、本来はここまでに3つのステップを踏んでからの話です。

システム選定においては、「価格の安さ」だけを基準にしないことが重要です。ステップ2で整理した業務フローに、どれだけ柔軟に対応できるか、自社の業務規模に見合った機能を備えているか、将来的に他のシステムと連携できるか、といった観点から比較検討します。

また、可能であれば、実際に導入している他社の事例や、無料トライアルを活用し、現場の担当者に触ってもらったうえで判断することをおすすめします。実際に使う人の感覚を無視して選定してしまうと、後々の運用フェーズでつまずく原因になります。

なお、システム導入にあたっては、IT導入補助金をはじめとした公的な支援制度が用意されている場合があります。制度の内容や対象要件は年度によって変わるため、導入を検討する際は、最新の公募要領を確認するか、専門家に相談することをおすすめします。

ステップ5:運用・操作ルールの明確化

システムを選んだら、次に決めるべきは「どう使うか」というルールです。ここを曖昧にしたまま導入してしまうと、先ほどお伝えした「システムがルール通りに運用されていない」という失敗に直結します。

具体的には、「操作マニュアルの作成」「例外的なケースが発生した場合の対応方法」を明確にしておく必要があります。これは多くの企業で見てきた事象ですが、「システム作成者が意図していない使い方をしている」という状況が頻発しています。

例えば、

  • 「顧客入力欄に納品先を入力している」
  • 「値引き入力欄があるのに、明細に『値引き』とベタ打ちする」
  • 「金額の表示・非表示切替ボタンがあるのに、金額を入力した明細と入力していない明細をダブルで作る」

などなど……。

このように、システムがどれだけ素晴らしくても、作成者が意図していない使い方をすると全く役に立たなくなり、「システムを導入したのに業務が増えた」という最悪なケースもあり得ます。データの数が増えると修正が困難になるので、初期段階で手を打たなければなりません。

ステップ6:テスト実施

いきなり全社に本導入するのではなく、まずは一部の部署・一部の担当者に限定して、テスト運用を行います。

テスト運用の目的は、実際の業務の中でシステムを使ってもらい、想定していなかった不具合や、使いにくい点、ルールとして決めきれていなかった部分を洗い出すことです。この段階で見つかった課題は、本導入の前に修正・調整することができます。

テストの期間は、業務の性質にもよりますが、最低でも1〜2週間程度、できれば1か月ほど確保することをおすすめします。テスト期間が短すぎると、月次処理や締め作業など、日常的には発生しない業務での不具合を見逃してしまう可能性があります。

ステップ7:本導入

テスト運用で洗い出した課題を解消したら、いよいよ全社への本導入です。

このタイミングでは、対象となる従業員全員への説明会や、操作マニュアルの整備を行うことをおすすめします。特に、システムに苦手意識を持つ従業員がいる場合は、個別にフォローする体制を整えておくと、定着がスムーズに進みます。

また、本導入後も、しばらくの間は運用状況を定期的に確認する期間を設けてください。導入して終わりではなく、実際に現場でルール通りに使われているかどうかを、継続的にチェックしていくことが大切です。

IT化する際の注意点

ここまで、IT化を進める具体的なステップを紹介してきました。最後に、各ステップを進める中で、特に意識していただきたい3つの注意点をお伝えします。

現場のITリテラシーへの配慮

経営者や情報システム担当者にとっては当たり前に感じる操作であっても、現場の従業員にとっては、決して簡単ではないことがあります。

特に、これまで紙やExcelでの管理に慣れてきた従業員にとって、新しいシステムへの切り替えは、大きな心理的ハードルになります。操作マニュアルを整備するだけでなく、実際に操作しながら学べる研修の機会を設けたり、わからないことをすぐに聞ける環境を用意したりすることで、現場のITリテラシーの差を埋めていく工夫が必要です。

現場の声を無視しない

IT化を進める際、経営者や情報システム部門だけで方針を決めてしまい、現場の意見を聞かずに導入を進めてしまうケースがあります。しかし、実際にシステムを使うのは現場の従業員です。

現場の声を無視して進めたIT化は、たとえどれだけ優れたシステムであっても、「使われないシステム」になってしまうリスクが高くなります。ステップ1・2でお伝えした通り、現場へのヒアリングを丁寧に行い、導入後も現場からのフィードバックを継続的に集める仕組みを作っておくことが、定着への近道です。

見直しと修正は定期的に

IT化は、本導入した時点がゴールではありません。事業の成長や人員の増減、業務内容の変化にともなって、当初決めたルールや運用方法が実態に合わなくなってくることは珍しくありません。

そのため、本導入後も一定期間ごと(例えば3ヵ月に一度など)に、「今のルールは現場で守られているか」「そもそも今の業務フローに合っているか」を見直す機会を設けることをおすすめします。見直しの際は、ステップ1・2と同じように、現場の声を直接聞きながら、必要に応じてルールや運用方法を修正していきましょう。定期的な見直しの仕組みをあらかじめ決めておくことで、IT化を「一度きりのプロジェクト」ではなく、継続的に改善していく取り組みとして根づかせることができます。

IT人材の育成はどうする?

中小企業の多くは、専任の情報システム担当者を置く余裕がありません。そのため、IT化を進める中心人物が、他の業務と兼務しながら対応せざるを得ないケースがほとんどです。

理想を言えば、社内に一人でも、IT化の旗振り役を担える人材を育成しておくことが望ましいです。ただし、それが難しい場合は、外部の専門家やコンサルタントの力を借りながら、伴走してもらう形で進めるという選択肢もあります。大切なのは、「IT化を、特定の誰か一人の頑張りだけに依存させないこと」です。属人化を防ぐためにIT化を進めているはずなのに、そのIT化自体が特定の担当者に属人化してしまっては、本末転倒です。

この点については、当事務所で研修を行っていますので、ぜひご活用ください。

よくある質問

Q. IT化はどの業務から手をつけるべきですか?

発生頻度が高く、複数人が関わっていて属人化のリスクが高い業務、あるいはミスが起きたときの影響が大きい業務から着手することをおすすめします。一度にすべての業務をIT化しようとせず、小さく始めて成功体験を積むことが、結果的に全体のスピードを早めます。

Q. システム選定の前に、必ず業務フローを整理しないといけませんか?

必須です。業務フローの整理を飛ばしてシステムを選んでしまうと、実際の業務とシステムがかみ合わず、「システムを導入したのに、かえって業務が増えた」という事態を招きやすくなります。地味な作業に見えますが、IT化を成功させるための最重要ステップです。

Q. IT導入補助金は使えますか?

制度の内容や対象要件、公募時期は年度によって変わります。利用を検討する場合は、最新の公募要領を確認するか、専門家に相談することをおすすめします。

おわりに

今回は、社内IT化を正しく進めるための7つのステップと、その際に気をつけたい3つの注意点をお伝えしました。

中小企業白書のデータが示す通り、多くの中小企業がすでにデジタル化に取り組んでいるものの、その効果を十分に実感できていないのが実情です。その原因の多くは、「何のシステムを入れるか」から考え始めてしまい、その手前にある「課題の可視化」や「業務フローの理解」を飛ばしてしまっていることにあります。

システム選定は、7つのステップのうち、あくまで4番目です。地味に思えるかもしれませんが、その前段階を丁寧に踏むことこそが、IT化を成功させる一番の近道です。もし自社のIT化の進め方に不安がある場合は、お気軽にご相談ください。

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